茂吉と白秋 3
北原白秋は、昭和4年3月から4月にかけて、40余日間、満州(現在の東北地方)蒙古を旅行し、その折の作品は、歌集『夢殿』におさめられています。
「寒月は谷を埋むる屍にまた冴えたらし或はうごくに」
「影つけて日向選り来る荷かつぎの肩かへにけりたぶつく水桶」
「鳴くまでは白霊の籠手に据ゑて爺ぞ居りける春のひねもす」
「くらくらと牛の頭煮たつ大釜の湯けぶりにしもや夕日ま赤き」
最初の一首、「屍山をなす」といわれた、日露戦争の古戦場に立っての作。
いわゆる写実の歌ではありません。
作者は早春の真昼の太陽を浴びて古戦場に立ち、20数年前の模様を思い描いています。
想像の中では、痛いほど冴えかえった空に斉がかかり、るいるいと戦死者の弊横たわる眼下の谷を昭州らしています。
ふとしては、動くはずのないその屍体が、かすかに動いたように思われます…。
二首目は解説を要しないでしょうが、「影つけて」に工夫があるでしょう。
空気の乾燥した大陸では、影と日向のコントラストがよけいにきわ立ちます。
そこをとらえています。